1.資産管理会社の必要性
個人で収益不動産を多く保有すると、所得が増え、高い税率の所得税が課されることになります。
また、個人に多くの財産が集中すると将来の相続の際には相続税がかかります。
資産管理会社を設立し活用する方法としては、
1.資産管理会社へ不動産の所有権を移す自社保有方式
2.不動産は個人が所有したまま資産管理会社へ管理を委託し管理料を支払う管理委託方式
3.不動産は個人が所有したまま資産管理会社が一括借り上げし、入居者へ貸し出すサブリース方式
4.自宅の所有権を資産管理会社へ移し、賃料を支払うリースバック方式 等があります。
2.自社保有方式のメリット
一般的に最も大きな効果が期待できる資産管理会社へ不動産の所有権を移す自社保有方式についてのメリットを挙げます。
【メリット】
・個人の財産が不動産ではなく、会社持分(株式)になるため、将来の相続の時、遺産分割が容易になり、不動産の相続登記も不要になる。(不動産法人化による相続税の軽減効果)
・法人税の様々なメリットが受けられる。(所得税対策(住民税含む)、法人税対策、相続対策、流動性対策効果など)
・将来的に保有不動産を増やしていく場合は、早めに資産管理会社を設立することで実績を積み、金融機関から「事業性評価融資」を受けやすくなり、事業拡大の可能性が広がります。
3.事業性評価融資とは
「事業性評価融資」とは、決算書の内容や保証・担保だけで判断するのではなく、事業内容や成長可能性等も評価して行う融資のことです。
○一般的な融資 … 財務データと保証・担保で融資可否を決定
○事業性評価融資 … 事業内容や成長可能性等も評価して融資可否を決定
従来の金融機関のスタンスとしては、借入申込を受けた際、決算書の内容や保証・担保の有無をもとに判断することが一般的でした。融資したお金が返済してもらえないようなことがあると困るからです。
ところが、そうした手法による融資では、成長力はあるものの、決算書の内容があまり良くない企業の場合、事業に必要な資金が調達できないことがありました。
成長力のある企業や、有望な事業計画を有する企業が資金的な制約のために事業を遂行できず、実力を発揮できないとなると、雇用や地域経済そして日本経済にとってもマイナスです。
そうしたことから、平成25年6月14日に閣議決定された「日本再興戦略」には「日本産業再興プラン」の具体策の一つとして「地域金融機関等による事業性を評価する融資の促進等」が盛り込まれました。
つまり、国として、事業性(事業としての有望さや成長可能性等)を評価した融資が行われるように促進していく、という方針が出されたことになります。
これを受け、金融庁の方針に「事業性評価に基づく融資等」が盛り込まれました。金融機関を監督する金融庁の方針が従来とは大きく変化したことになります。
「円滑な資金供給の促進に向けて」(平成27年7月発行)という金融庁のパンフレットにも
「金融機関が目利き能力を発揮して、融資や助言を行い、企業や産業の成長を支援することは、金融機関の果たすべき基本的な役割です。金融庁では、金融機関がこうした役割をしっかりと果たすよう、事業性評価に基づく融資等を促しています。」
として、「自らの事業の内容や今後の見通し等について、金融機関によく説明・相談してみましょう。」とアナウンスしているのです。
そこで、この事業性評価融資を受けるため必要な事として、金融機関に自社の強みや今後の事業展開の計画について、十分に知ってもらう事が事業性評価融資を受けるために必要です。
4.金融機関が事業性評価を行うために必要な情報
金融機関が事業性評価を行うために必要な情報としては、
1.経営者の経営能力や経営理念、経営ビジョン
2.決算書には表れない企業の強み(優秀な人材・ノウハウ・技術・顧客資産・優良な仕入先・社外ネットワークなど)
3.今後の事業展開の計画 等があります。
そのためには次の項目を記載した事業計画書を提出し、金融機関に対して説明することが必要と考えます。
・経営理念・経営ビジョン
・事業概要・沿革・実績
・自社の強みや課題
・外部環境分析(市場・顧客のニーズ、競合の状況など)
・今後の経営方針
・具体的な行動計画等
・数値計画(損益計画・投資計画・資金計画等)
なお、決算書には表れない企業の強みのことを「知的資産」と言います。
自社の知的資産について洗い出しを行い、知的資産の活用について記載した「知的資産経営報告書」を作成する事は、事業計画書の作成や金融機関への自社の説明において、非常に有効と考えます。
5.まとめ
このように、不動産法人化をすることで、所得税や相続税の軽減を図ることができ、更に健全に事業を拡大できるように、このたび、弊社で資産管理会社を設立いたしました。
不動産を保有・管理・健全に運用していくには、その時期に合わせたリフォームや機械設備、外壁、屋上等の修繕が必要になりますが、その修繕費を安全にコントロールするためにも、小規模企業共済の活用で、退職所得控除を準備しながら節税&資産運用を行ったり、経営セーフティ共済の活用を行う等、多岐にわたって様々な資産保全を行ってまいります。
経営セーフティ共済で例えるならば、本来の目的は、取引先が倒産して貸付金の回収ができなくなったような場合に備え、中小企業者自らが掛けていた掛金(積立金)を担保に一定額を借入れする事ができるというものですが、資産管理会社を運営していて、実際に取引先が倒産することはありません。
経営セーフティ共済の掛金(月額5千円~20万円)は、その全額が損金算入可能であるため、実効税率の階段を落とすために利用することができ、40月以上の納付期間がある場合には、解約時に解約手当金として掛金全額が返還されるため、返還時の一時の課税を防ぎながら保有不動産の修繕費に充当し、収益保全を図ることができます。
つまり、生前から適切な不動産運用を実施することによって、資産の健全化を図り、最適な資産継承が可能となります。
相続開始後に対策を講じるには、10か月という期間はすぐに経過してしまいます。将来、後悔しないためにも、早めの工夫や対策を講じる等の準備が必要と感じます。
相続税対策で不動産評価額を圧縮し、健全な賃貸住宅経営を希望されている方や、相続不動産を急いで現金化する必要に迫られてお困りの場合には、どうぞ資産管理に詳しい弊社にご相談ください。
最善なパートナー企業をご紹介できることと存じます。
また、不動産売却は行うけれど、高齢者福祉施設や、未来を担う子ども向け認定こども園(幼稚園や保育園など)を建設したかった等の希望を叶えられる可能性のある計画地であれば、弊社で購入・建設し、施設運営までお手伝いすることで喜びをお届けできますれば幸いです。